170回、好きだと言ったら。
不愉快そうに眉をひそめていた女性は、あたしの方へ視線を向けて「それでよ」と口角を上げた。
「あんな喧嘩を眺めてるだけで、何にも興味を示さない男が。
唯一、激愛してるっていう妹をずっと見てみたくてね…。こんなにも可愛らしい子なんて知らなかったわ!」
「……桃妃子、キャラぶれぶれやな。
ほんまは大人しくてお嬢様みたいなヤツやねんけど、この悪鬼実野族に来てからは変に吹っ切ってもうてな。
全く…うるさいやつは好みやない」
二人の会話を聞いていると、不意にあたしの携帯が鳴り響いた。
ポケットに入れたままだったのを思い出して開くと、ディスプレイには《テルくん》と書かれていた。
《……頭冷えた、悪かった。迎えに行く》
「あら、照道が素直なんて明日は槍が降るのかしら」
「そう言うたりなや、アイツも好きな女の前やと不器用なりに変わるねんて」
「へえ…やっぱり貴方達付き合ってるのね?」
「え、あ、いや…付き合ってないですよ! それにテルくんは…あたしのこと、幼馴染としか思ってないんで!」