170回、好きだと言ったら。



慌てて両手を横へ振れば、二人の目が点になった。
それから噴き出すように笑うと、女性があたしの頭を撫でた。


「なあにこの子! 可愛いじゃない、気に入ったわよ。
私、遠藤 桃妃子(エンドウ モモヒコ)。気軽に桃妃子でも簡潔に桃でもいいわ」

「可哀想やな、こんな女に気に入られるなんて」

「どういうことかしら、潤」

「せや、俺もちゃんと自己紹介しとらんかったわ。
俺は佐久間 潤(サクマ ジュン)。気軽に潤で構わんで」


それは恐れ多いのでとりあえず桃妃子さんと潤さん、と呼ぶことにした。


「じゃ、じゃああたしテルくんがそろそろ来ると思うので帰ります!
色々ありがとうございました…!」


ぺこりとお辞儀をすれば、潤さんがあたしを引きとめた。


「アンタの名前…、みーちゃんってアイツは呼んどったけどほんまは何て言うんや?」

「えっと、実衣です。実るって字に衣(コロモ)と書きます」

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