170回、好きだと言ったら。
教室に着いて、あたしは鞄から一冊の本を取り出した。
それはお兄ちゃんが愛読していた“0%から1%に変える生き方”という単行本だ。
この本に書かれている文章は、一つ一つがメッセージのように伝わってくる。何時もそれにあたしは励まされた。
(…逃げていても、0という数字は変えられない、か。そりゃあそうだよね。1%の希望を見出すには、何かしら行動が必要だもん)
「あ、沖宮さん。そ、それって杜禰(トネ)リマ先生の本じゃない?
わたしも好きだから読んでるのっ…!
あ、わたしは小野瀬 心って言うんだけど…」
小野瀬(オノセ)さんはあたしを見てにこりと笑った。
進級してから早一ヵ月ほど経ったけど、あたしは完璧にクラスで浮いていたし、誰かと話すなんて一切してこなかった。