170回、好きだと言ったら。



お兄ちゃんのことを思い出して、胸がずきりと痛んだ。

もう、お兄ちゃんがいなくなって早一年が過ぎた。
毎日見る景色は何一つ変わらないのに、そこにお兄ちゃんはいない。


気まぐれにあたしをバイクの後ろに乗せて、行く当てもなくただバイクを走らせる。
その時々訪れた、お兄ちゃんとの日々が。あたしはとても好きだった。


目の前に映る大きな背中に頬を擦り付けると一筋涙を零す。
どうしてお兄ちゃんは死んでしまったの?


…あたしのことを好きだと言ったから?


違うと分かっていても、お兄ちゃんが亡くなる日の朝、好きだと言ったあの瞬間、嫌な予感はしていたのだ。


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