170回、好きだと言ったら。



前に家に上がったが、実衣の家は何故だか甘い香りがする。

実衣の髪から香るのと一緒だ。


玄関の鍵を閉めて、とりあえず適当に俺の靴を脱いで、実衣の靴も脱がせる。
靴箱の上に飾られた写真立てを見て、苦笑してしまった。


「ブラコンかよ……」


実衣と実衣の兄貴が映ったツーショット。
二人とも馬鹿みてぇに笑って幸せそうだ。

それなのに実衣の兄貴は今、どこを探してもいない。


俺はギリ、と奥歯を噛み締めて、そのまま二階を目指した。


実衣の自室に入ると、とりあえずベッドに寝かせる。俺達が幼い頃実衣の誕生日プレゼントであげた(実衣がプレゼント欲しいとダダこねたから)ぬいぐるみが実衣と一緒にシーツに沈んだ。


「……俺、男だってのにコイツと来たら無防備な姿見せやがって」


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