170回、好きだと言ったら。
一人で文句を呟くと、実衣の鮮やかな桃色の唇に視線を向けた。
「…」
この前、俺は実衣にキスをしてしまった。
実を言えば俺のファーストキスはとっくに済んでいる。勿論、相手は実衣だ。
幼い頃からお昼寝が好きだった実衣は隙まみれで、俺は眠っている実衣に一度キスをしたことがある。
好奇心旺盛だったせいか、それとも気の迷いだったのか今では謎だ。
しかし罪悪感など微塵も感じていない。
それ程、俺は実衣のことが好きだったのだろう。
愛の一つや二つすら知らなかったあの頃の俺は、今よりも行動力があったのだ。
とは言っても、ここで実衣が「キスして」と言えば迷いなくしてやる。ただ触れ合うようなキスじゃなくて、もっと熱いヤツをな。