170回、好きだと言ったら。
あの言葉に俺は救われたのだ。
身体が弱いことを知っているのは、実衣の家族と俺の仲間ぐらいだろう。
俺の両親は海外出張と言いながら、どこぞのバーで飲み歩いてるはずだ。愛なんて所詮一時のもので、すぐに壊れてしまうんだとクソ親父は言っていたが違う。
実衣への愛は、誰に何と言われようと生涯に一度だけの感情だ。
壊れる? 勝手に言ってろよ。
愛してるっつぅ言葉に偽りなんていらねぇ。
俺は未だに実衣に対して、曖昧な突き放し方をしている。キライだと言いながら、結局は実衣の傍にいてしまうのだ。
さらりと実衣の顔にかかっていた髪を横へ流すと、ベッドに両手をついた。
ゆっくりと顔を近づければ、甘ったるい香りが強くなるのを感じる。
今はたった2文字すら伝えることは出来ねぇ。だけど、170日待っていてくれ。
俺にとって三度目のキスは、離すのがとても名残惜しい思い出となった。