170回、好きだと言ったら。


突然話しかけられたことに驚きつつ、読んでいた本を彼女に見せれば「しかもこれ限定版だ!」と興奮するように言った。


「…? 限定版とかあるの?」

「えっとね、わたしが持っているのは文庫本のほうで、一番初めにその単行本が発売されたんだけど、経ったの二日で完売したんだって。
だから、わたし…仕方無しに文庫本のほうにしたんだあ」


じゃあお兄ちゃんは朝早くに買いに行ったということだ。


「えっと…、小野瀬さんは他にもこの作者の本持ってるの?」

「勿論…! 沢山持っているよ、今度か、貸そうか?」

「……いいのっ?」


驚いて彼女を見れば、えへへ、と少し嬉しそうに笑う。


「わたし、こういう本の貸し借りとか憧れてて…。沖宮さんがいつもその本を朝に読んでるの知ってたから、話しかけたいなあってずっと思ってたんだ…」

「そう、なんだ…じゃあよろしくね、小野瀬さん」


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