170回、好きだと言ったら。
入学して一年と一ヵ月ほど過ぎた現在、ようやく学校で話せる人と出会えた。
小野瀬さんは本当に杜禰リマさんの本が好きな人だ。
もしかしたらお兄ちゃんと気が合ったかも知れないのに、彼女に紹介できないのが残念。
さすがに一年前に亡くなったなんて言えず、あたしは彼女の前ではなるべくお兄ちゃんの話をしないようにした。
「あ、じゃあ先生がそろそろ来るから…また休み時間とか話そうね…!」
それだけを言って席へ戻る小野瀬さん。
進級した当初、クラスメイトの顔なんて全然興味なかったから見てなかったけど、彼女はとても可愛い人だと分かる。
メガネをかけているのに、目はぱっちりしていて可愛らしいし、髪もショートボブでとても似合う。
あたしは地毛である自分の痛んだ栗色の髪に触れて、今度美容院に行こうかな、なんて思った。