170回、好きだと言ったら。
あたしは思わず振り返ると、そこに見慣れた男性が一人。
いつの間にかあたし達を囲むようにバイクが並んでいた。
ささっと小野瀬さんがあたしの背中に隠れたのを確認しながら、極めて冷静な態度で目の前の男性を睨んだ。
「……何の用、ですか。飛澤さん」
「前に誘拐したときは悪かったな。あの時は副総長をどうしても見つけ出して欲しかったがために、お前を使ってしまった。
しかし…、まさかお前がアイツと関わっているなんて予想外だったがな」
「……!!」
いつの間にあたしと小鳥遊さんが一緒にいるところを見られていたのだろうか。
ピリピリした空気に泣きそうになるのを必死に堪えていると控えめに袖が引っ張られた。
「…隙を、見て逃げよう? 沖宮さん…」
小さな声で呟いた彼女に、あたしは現実に引き戻された。ありがとう、小野瀬さん…。
小野瀬さんの言う通り、ここは逃げたほうが勝ちだ。
だけど、どうやって?
あたし達は今囲まれていて、逃げ道なんてどこにもない。