170回、好きだと言ったら。



バイクから降りた飛澤さんがこちらへ歩み寄ってきた。

身構えると、後ろで小野瀬さんがびくりと震えた。


「お前の兄貴が照道に呪いをかけたんだよ。
《好いた女のためなら一生思いを伝えるな》とな」

「…そっ、そんなのお兄ちゃんが言うわけがありません!」


お兄ちゃんはあたしがテルくんのことを好きだっていう気持ちに気づいていた。
冗談で「照道は情けないからやだ」とか言っていたけど、それでもお兄ちゃんは応援してくれた。


「あたしのお兄ちゃんは…、呪いをかけたりなんて絶対にしないような人です。
知り合いに聞きましたが、飛澤さん。貴方にお兄ちゃんが喧嘩を売ったと知っても、あたしはお兄ちゃんを幻滅したりしません」


どんな状況においても、お兄ちゃんなら必ず理由があったはずだから。

< 151 / 284 >

この作品をシェア

pagetop