170回、好きだと言ったら。



はー、と長いため息を零した飛澤さんはポケットから煙草を取り出す。

火をつけると、あたしの方へ視線を向けた。
先程とは打って変わった態度に、思わず背筋が凍りそうになった。


「……これだから女は嫌いなんだ。
いいか、よく聞けよ。男ってのは大概が嘘をつかないモンだ。そういう筋を通したいからな。
だけど、俺達は違う。
喧嘩ばかりしてきたような連中が、嘘をつかないなんて生温いこと出来るはずがない」


つまり、と飛澤さんが言葉を続けた。


「お前の兄貴も、照道も。そして俺も、どれが本当で嘘かお前は知らないだろう」

「!!!」

「騙された女はそうやって壊れるもんだ。
俺は一度照道の両親と会ったんだが、あそこは相当に壊れていたよ」


…テルくんの両親?
海外出張に言ってるってテルくんが言っていたはず…。


「…で? お前はどうして俺ンとこの副総長さんと二人きりで会っていた?
まさかお前達が密会してるとは思っても見なかったが」

「……密会なんて誤解を招くような言い方しないで下さい。
あたしは知りません、副総長なんて人は」

「……そうか、つくづくお前という女は春威そっくりだ。俺の言葉一つに否定しやがるところ、鞠を庇うところだって」


…鞠、というのは小鳥遊さんの名前だ。
あれ…? そういえば潤さん達とショッピングモールに行くとき、学校前で桃妃子さんが話していたような……?


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