170回、好きだと言ったら。
テルくん以外の人とどうこうなるなんて、死んでも嫌だと思った。
だけど、それでテルくんや小鳥遊さんが救われるなら別に構わない。
震える足を踏み出して飛澤さんに近寄れば、煙草の香りが鼻腔をくすぐった。
思ったよりも長い黒髪、ぼさぼさしているけど髪は痛んでいなかった。
逞しい腕が伸びて来てあたしの腰に回ると、ぞくりと身の毛がよだつ。
全然違う触れ方に、ただただ怖いとしか思えない。
そんなあたしを見て、飛澤さんが緩く口角を上げた。
「そんな怯えなくても取って食うつもりはない。お前が変に逃げ出したりしなければの話だが」
「っ!!」
「女になる、という意味を理解した上でお前は承諾した。その事実を裏切るのか?」
「……そ、れは」