170回、好きだと言ったら。



あまりにも冷たい言葉にあたしは思わず手を伸ばした。

キライでもいい。
二度とあたしの名前を呼んでくれなくてもいいから―、ただもう一度だけ。

キスをして欲しいと、そう思ってしまった―……。



「……っ、あ、れ?」


乾ききった声で言いながら辺りを見渡すと、見慣れた玄関だった。
そっか、あたし夢を見ていたんだ…。


「ふぇっ…やだよ……、テルくんに…嫌われるなんて……!」


ぼろぼろと涙が零れ落ちて、もう前が上手く見えない。
胸が締め付けられるように苦しくて、息が全然出来なくて、ぎりっと奥歯を噛み締めた。


今でも耳元に残る飛澤さんの声。
嫌なのに、離れることは許されない。


お兄ちゃんはどんな気持ちで飛澤さんの元へ行ったの?

分からないことだらけで心が悲鳴をあげた、その時―。


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