170回、好きだと言ったら。
不意に浮かんだお兄ちゃんの表情は《笑顔》だった。
そうだ…、お兄ちゃんは本当にいつも笑っていて。
それこそ苦しいときだって、ずっと。
「……本当、不器用だよ。お兄ちゃん」
今更気づいたところで遅いと分かっている。
それなら―、あたしは自分のやるべきことをやり遂げよう。
「小野瀬さん、お願いがあるの」
「??」
一時限目の授業で、とりあえずあたしのお兄ちゃんが暴走族の頭に立っていたこと。
今はあたしの幼馴染がそれを引き継いでいることを説明した。
それから、お兄ちゃんの親友を襲撃する、と脅してお兄ちゃんが脱退したことや、その脅した人が前に行ったカフェの怖かった人。
今、あたしはその人の女にならなければならないことまで説明をし終えると、呆然としたまま小野瀬さんは呟いた。
「…何か住む世界っていうか、何かもが違うね…」