170回、好きだと言ったら。

ううん、全然小野瀬さん悪くないよ！と言う意味も含めて、何度も首を横へ振る。


「何か沖宮さんって静かな子だと思ってたから、ちょっと話しかけにくいとか思っちゃったけど、全然雰囲気違うね…！
今日沖宮さんに話しかけてよかった」


ふわりと微笑む彼女に、あたしまで頬が緩んでしまう。

「じゃあまた明日」と彼女が手を振って立ち去るのを見送ると、あたしは晩御飯の材料を買いに《はちみつば》スーパーへと足を運んだ。



テルくんの要望は辛いものだけど、結構色んな料理があるんだよね。
例えば麻婆豆腐とか、坦々麺だってそうだ。後はありきたりなカレーでもいいかも知れない。


悩みながら《はちみつば》スーパーに辿り着くと、お豆腐が安いと書かれたチラシが目に留まる。
あたしは目を輝かせると、迷い無く麻婆豆腐にしようと決断した。


カゴを持って豆腐売り場へ向かおうとしたとき、一人の大学生くらいの男性が、何やら野菜売り場で立ち止まっていた。