170回、好きだと言ったら。

小鳥遊さんはあたしの話を聞いて、とても悲しげな表情を見せた。

折角引き止めようとしてくれたのに、あたしはその好意を受け取れなかったのだ。
逆の立場で考えてみたらすぐに分かる。
どれ程、今小鳥遊さんが悲しい気持ちになっているか。


「…じゃあ沖宮さん。
貴方にとっての幸せはなんですか？」


あたしは迷うことなく答えることが出来た。


「好きな人が、かけがえの無い兄が笑っていられる世界で、あたしも生きることが出来るのが幸せです」

「……本当、春威そっくりなんですね。沖宮さん、貴方の瞳が揺らぎ無くて引き止めたいはずなのに、とても安心してしまいました」