170回、好きだと言ったら。
料理を食べ終えたあたし達はとりあえずその場を後にした。
店前でバイクに跨った小鳥遊さんは、さりげない動作であたしにヘルメットを差し出す。
「…僕が逃げ出したのは春威のいない世界に耐え切れなかったからではありません。
飛澤さんを…止めたかったからなんですよ」
ヘルメットを受け取ってお礼を言おうとした時だった。
突然切り出した話に驚きを隠せずにいると、小鳥遊さんはあたしの方へ視線を向けた。
彼のクセのある髪がふわりと風でなびく。
「飛澤さんは失ったとき全てに気づきます。
それが彼を止める唯一の方法だと思って、僕は火鎖我族から逃げました。
…だけど沖宮さんの覚悟を見て、僕も考えを改めようと思います。逃げてばかりでは何一つ現実を変えられないことくらい、随分と昔に気づいていましたから」