170回、好きだと言ったら。



飛澤さんがカフェの隣にある倉庫からバイクを持ってくると、あたしに後ろへ乗るよう指示した。


……本当に見たくもない喧嘩を見せられるのだろうか。

テルくんが喧嘩をしているところは、今までで数回見たくらいだ。
いつも傍にいてくれるとは言え、喧嘩をするときだけはあたしが家や学校にいるのを確認して出かけたりしたから。


「ちゃんと掴まれ、落ちたくなければな」

「…そこはテルくんで慣れているので、少しだけ掴まらせて貰うくらいで十分です」

「随分と嫌われてるな」

「自覚ないんですか」


冷たい言い方をしても飛澤さんは何も言わない。

…どうして、この人はそんなに《嫌われる》ことに対して悲しんだりしないのだろう。


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