170回、好きだと言ったら。
部屋を出て廊下の突き当たりに行くと、震える手で通話ボタンを押した。
「も、もしも…」
《実衣ホテル出て裏口に来い》
「えっ、テル―」
プツン、と途切れた携帯のディスプレイを数秒眺めて小さく息を吐いた。
…どういう意味なんだろう。
よく分からないまま、テルくんの言ったとおりの場所を目指した。
途中で先生が見回りでばったりと遭遇しないか不安だったが、何とか外へ抜け出すと、夏だというのに冷たい風が頬をかすめた。
裏口へ向かうと、そこに見えた少しはねた黒髪が見えて、思わずドキリとしてしまった。