170回、好きだと言ったら。
懐かしいお父さんは昔と変わらず、豪快に笑うところも優しい瞳も同じだ。
堅苦しい服が嫌いで多少着崩しているけど、それでもネクタイはちゃんとしている。
お兄ちゃんと同じで変なところにこだわりがあるのだ。
「ん? みーちゃん、元気ないか?」
「っへ!? ううん! 何で?」
「そうかお父さんの見間違いか!
みーちゃんは嘘をつくのが下手だし、そうやって慌てるところも怪しいが一人で抱え込むんじゃないぞ!」
「お父さん……」
「やっぱり何かあったのか?」
優しく訊ねるお父さんに全て打ち明けたくなったが、その言葉が口から出ることはなかった。