170回、好きだと言ったら。



懐かしいお父さんは昔と変わらず、豪快に笑うところも優しい瞳も同じだ。

堅苦しい服が嫌いで多少着崩しているけど、それでもネクタイはちゃんとしている。
お兄ちゃんと同じで変なところにこだわりがあるのだ。



「ん? みーちゃん、元気ないか?」

「っへ!? ううん! 何で?」

「そうかお父さんの見間違いか!
みーちゃんは嘘をつくのが下手だし、そうやって慌てるところも怪しいが一人で抱え込むんじゃないぞ!」

「お父さん……」

「やっぱり何かあったのか?」



優しく訊ねるお父さんに全て打ち明けたくなったが、その言葉が口から出ることはなかった。


< 224 / 284 >

この作品をシェア

pagetop