170回、好きだと言ったら。



三つほど買った豆腐に「麻婆豆腐?」と少し声のトーンが高くなったテルくん。

辛いもの大好きテルくんは、麻婆豆腐が大好物なのだ。決して素直な態度は見せてくれないが、表情が「嬉しい」と物語ってくれる。


あたしは袋を机の上に置くと、台所に立って料理を始める。不意に近寄ってきたテルくんはあたしのエプロンの紐に触れると、緩んでいたらしく結び直してくれた。


「あ、ありがとう…! テルくん」

「…実衣早く作れ、腹減った」

「うん、すぐ作るね!」


手を洗って料理を再開させれば、テルくんはソファへ戻ってしまう。
だけど、キライじゃないよ。テルくんと同じ空間にいて、テルくんに料理を振舞えるこの時間が。


「実衣、明日雨だってよ。傘持ってこい」

「ほんと? テルくん、洗濯物あるなら出しておいてね。あ、テルくん。今日お友達出来たんだよ。クラスメイトの女の子で、とっても優しい子」


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