170回、好きだと言ったら。



飛澤さんの背後に現れた鉄パイプを持った男性に、思わず身体が動いていた。

桃妃子さんの引き止める声を無視して、あたしは「飛澤さん!」と彼を呼んだ。
息を切らしながら振り返った飛澤さんを突き飛ばすと、もうそこまで鉄パイプは迫っていた。




「な……」

「沖宮さん!? ど、どうして飛び出して…そんなこと言っている場合じゃない…。
桃妃子!」

「!」

「救急車を早く呼んでください!」

「どないしたんって…誰や、喧嘩は拳だけゆうたやろ!??」


何だか身体の力が抜けてしまって上手く動けない。
頬を生温い何かが伝うと、どんどん皆の声が遠のいてしまう。


「お前、何で俺を庇った…!?」

「やめときぃ、飛澤! おい、はよ救急車を!」


最後に聞こえた飛澤さんの声があまりにも悲痛な叫びのようで、あたしは大丈夫だと言いたかったがそれ以上に痛みが酷くて意識を手放した―。


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