170回、好きだと言ったら。
また明日、何て言葉まで言ってくれた子。
中学生の頃はそんな事を言ってくれる人がいなかったから、今でも忘れられないくらい嬉しかったのだ。
テルくんは「ふーん」とつまんなさそうに言ったけど、あたしの大事な思い出が増えたんだよ、テルくん。
「…実衣、飯食ったら着いて来い」
「? どこに?」
「着いてくれば分かる」
「いいよ、じゃあ着いて行くね」
やったね、テルくんからのお誘いだよ!
滅多にないお誘いに浮かれていると、テルくんはのそりと立ち上がった。そのままポケットから携帯を取り出すと、あたしに向けてパシャリと音を奏でた。
「え!? テルくん今撮ったの!??」
「実衣すっぴんだからな、別に減るもんじゃねーだろ。今更」
確かにメイクは苦手だけど…、今も薄らとしてるんだよ? 目のところにアイライン引いただけなんだけどね…!
「…実衣、料理焦がしたら許さねえぞ」
「え、あ!」
テルくんに言われなかったら本当に焦がすところだった…!
慌てて豆腐をかき混ぜると、テルくんがごほっと一度咳き込んだ。
振り返ると、テルくんはそこにいない。洗面所かな、と思いながら料理を再開させた。