170回、好きだと言ったら。



バーに着いて適当に時間を潰していれば、実衣が階段から下りて来た。


俺を見つけるなり犬みたいに顔を輝かせる。
が、先程俺が出て行ったのを思い出して、今度はとぼとぼと効果音がつきそうなくらい寂しそうな表情を浮かべて近寄ってきた。


「実衣」


ただ、名前を呼んだだけだ。
それなのに実衣はぱっと顔を上げた。その顔が可愛いとか思ってしまうのは、長年片思いを拗らせた結果なのだろう。


実衣を連れてバイクに乗せると、ちゃんと俺の腰に掴まったのを確認してバイクを走らせた。



何を考えているのやら。
実衣は俺の背中に擦り寄ってきたり、いきなりぐすぐすと鼻を啜る音が聞こえたりで、実衣の情緒不安定さが伝わった。


佐久間の野郎…、実衣の兄貴について何か言いやがったな。三回地獄見せてやろうか。


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