170回、好きだと言ったら。
沖縄行きの席が空いていた飛行機に乗って、向こうに着いたのが夜中だった。
俺は実衣に会えば、全てを話してしまいそうで怖かった。
もし、手術が成功しなければ死ぬ可能性があるなんて言えるわけがねぇ。
目の前に現れた実衣は石につまずいて転びかけたのを、俺がちゃんと抱きとめた。
…本物だ。
この三ヶ月以上、実衣に全く連絡することが出来なかった。一人で病気と闘い、ずっと放置をしていたにも関わらず、実衣は変わらない表情で俺を受け止めた。
「…何が何でも170日の約束待ってろ。
てめぇがどう言おうが知ったことじゃねぇからな。
……で、勝手にバカなマネしたら後でお仕置きすっから」
身勝手なことを言った俺は実衣に甘ったるいキスをした。
好きだ、実衣。
もう死ぬ未来なんて考えねぇ。
だから、俺のいないところで無茶すんな。
この時の俺は―…、実衣のことを何も知らずにただ夢中になりそうなキスで頭がいっぱいだったのだ。