170回、好きだと言ったら。



その言葉に潤達は顔を見合わせると同時に、集中治療室が開いた。

現れた医者に潤や桃妃子、そして小野瀬が近寄ると、医者はマスクを外しながら息を吐いた。


「手術は成功しました。後遺症も残っていないそうです」

「…よかった!」


ぱぁっと嬉しそうに顔を輝かせた小野瀬に対して、医者は極めて冷静に「ですが」と言葉を続けた。


「彼女が一週間以内に目覚めなければ…、最悪の場合も考えられます。手術が成功したとは言えど、彼女の免疫力が低下し続ければ、心臓も弱まってしまいますから気を抜くことは出来ません」


一瞬の喜びから地獄に突き落とされたような感覚だった。
再び肩を落とした小野瀬を優しく撫でるのは桃妃子だ。鞠は相変わらず涙もろいのか俯いたまま顔を上げない。


個室へ連れて行かれる彼女を見届けた後、潤は立ち上がった。その瞳は揺らぎなく前を見つめたままだ。


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