170回、好きだと言ったら。
まるでそこだけが時間が止まったように感じるほど、物音が一つもしない。
彼女の寝息が時折聞こえるくらいだ。
何の夢を見ているのかは分からない。ただ、悲しそうに眉間にシワを寄せていた。
それを解すように触れれば、ゆっくりと彼女の瞳が開いた。
自分と同じ、その瞳をこちらへ向けられる。
まどろんでいるのか自分を通して遠くを見つめる彼女に、つい頬に手を滑らせていた。
大丈夫だよ。
もうすぐ照道が来るから。
アイツはもう以前の照道とは違う。長年拗らせたお互いの恋もちゃんと両思い駅に辿り着けるよ。
これは俺が考えた言葉なんだ。鞠って何だかんだ言って俺に影響されやすいからね。
片思いを乗せた電車は最終的に間違った駅に着いてしまうのか、それとも両思い駅に辿り着けるのか―、それは君たち次第だ。
だから起きて照道と幸せになってよ、みーちゃん。愛しているからね。
俺の姿はふわりと透けて、その場から完全に消え去った―。