170回、好きだと言ったら。
あたしの言葉に一度頷いたテルくんは、両腕を広げた。馬鹿なあたしは一瞬だけ、腕の中へ飛びつきたくなったけど、ボールを握り締めて抑える。
思い切り腕を振りかぶってボールを投げた。
赤いボールが弧を描いて、あたしとテルくんの間に落ちる。…ごめんね、テルくん。あたしボール投げは昔と変わらず、大の苦手なんだ。
「実衣ヘタクソ、こう投げんだ、よっ!」
「わわっ」
テルくんの投げたボールはふわりと宙を舞った。
無駄のないボールの投げ方に、あたしは惚れ惚れとしてしまった。
「あたっ!」
何て余所見をしていると、ボールはあたしの頭にぽんっとぶつかる。柔らかいボールでよかった…!
「…ほら、俺のところまで投げてみろよ。実衣」
「う、うん! 頑張るっ…えいっ!」
「違ぇよ、もっと斜め上見て投げるんだよ」
先程と同じ場所に落ちたボールを拾ったテルくんは、呆れ顔を含んだ表情で言う。
また自分の手のひらに戻ってきたボールを見つめて、テルくんの言う通り斜め上を見つめて思い切り投げた。
あ、今度はちゃんと弧を描けた…!