170回、好きだと言ったら。
初めて実衣の写真を撮ったのは、実衣の兄貴が死んでからだった。
キャッチボールをしようと言い出したのも、結局は実衣の兄貴のようになりたかったわけで。
実衣に愛されている自覚はあった。
だが、勘違いだったらとんだ自意識過剰野郎だろう。
不安と葛藤したが結果は満点だ。
実衣、と呼んで瞳に溜まった涙を吸い取ってやる。
いい加減返事をしてくれねぇと不安で仕方が無い。俺だって実衣に愛してるとか言われたいのだ。
…俺は一度でも実衣に愛してるや好きなんて言っただろうか。
憶えてる限りでは言っていない気がする。170回好きだと言ったら、なんて冗談ではなく言ったのだが、まだ一度も好きなんて言っていないな。
「好きだ」