170回、好きだと言ったら。
「ん、まあまあだな」
「…やった!」
「だけど、まだヘタクソ。もう少し距離伸ばせるようにしろよ」
額に滲んだ汗を拭うと、テルくんが思ったより優しい表情でこちらを見つめていた。
「実衣、上見とけ」
「? うん」
テルくんの言われた通り上を見上げれば、テルくんが思い切り夜空目掛けてボールを投げた。
赤いボールは今にも月に届きそうなくらい、空へと飛んでいく。
あたしは凄い凄い!と拍手をしながらテルくんへ視線を戻すと、いつの間にかあたしの隣まで移動していた。
「…実衣、こっち見ろ」
「あ! テルくん、またあたしを撮るつもりっ!??」
「…もう遅せえ」
パシャリと音が響いた。またテルくんが写真を撮って満足そうに頷く。
こんな時あたしも携帯を持って来れば…、なんて思っているとテルくんは「実衣」とあたしを手招きした。