170回、好きだと言ったら。
顔の前で手を組んだ飛澤さんは、「それのトップに立つやつを《頭(カシラ)》と言う」とあたしに教えた。
「じゃ、じゃあお兄ちゃんは…そんなにバイクに憧れて、トップを目指していたってことですか?」
確かにお兄ちゃんが亡くなった理由は、バイクと車の衝突事故だったし…。相手の不注意もあるけど、あの日は土砂降りの雨で結構危うかったのだ。
「…いや。俺達は只バイク好きで集まった輩じゃない。簡単に言えば“喧嘩好き”な奴も混ざっていてな。
気づけば仲間同士殴りあいが起きて、バイクで暴れるにゃ足りなくて。結局不良とさほど変わらん輩だったよ」
「そ、そうなんですか……」
「その中で断トツ的に強かったのが、お前の兄貴っつーことだ。俺は圧倒的な強さを持っていたから、その時頭を務めることになったんだけどな。
3年ほど前に事故に遭って、その時から左手が自由に動かせなくなった。だから次期頭をアイツに任せようとしたんだが、結局それは果たされなかったな」