170回、好きだと言ったら。
あたしは全然お兄ちゃんのことを知らずにいたんだ。
ただカッコイイお兄ちゃんの後ろを追って。守ってもらってばかりだった。
「……アイツ、引くほどの妹好きでな。どんなヤツかこの目で見たかったんだが、冷やかしに来るようなヤツとはな」
「そ、それは誤解で…!」
「まあ安心したのは一理ある。アイツと同じ負けず嫌いな目をしているからな」
そんな時、あたしの携帯が鳴り響いた。鞄に入れたままだった携帯を取り出すと、ディスプレイに表示された《テルくん》に驚く。
慌てて携帯の時計を見れば6時を回っていることに気づいた。
「わわっ、もしもし? テルくん?
ごめん! すぐ帰るから…。
え? 迎えに行く? 今どこって…? ええと…」
「×△丁目の杜禰通りだ」
「ええと…、え? 今の聞こえてた? 今から迎えに行くって…あっ、テルくん切れちゃった」
しかも今、杜禰って…。
「あー、知らなかったのか。ここの通りは杜禰リマが産まれた場所でもあるから、苗字に使用しているそうだ。
この店に来るのも近所だからだろう」
「そ、そうだったんですね…!」
「お前、本当はアイツのファンじゃないだろう。大方、春威の受け売りか」
「ギクッ…!」