170回、好きだと言ったら。
○テルくん甘え下手なんですね
―あれから1週間が経った。
あのカフェには一度も行くことはなかった。あの時のテルくん、何だか凄く焦っていたし行くなとは言われなかったけど、目がそう訴えていた気がする。
「沖宮さん、何か悩み事? 紅茶零しそうだよ…?」
「え、あ!」
そうだった!
今、定期試験が近いから小野瀬さんに勉強を見て貰っていたんだ!
駅前にある真新しいカフェで、あたし達は小さなテーブルの上でノートを広げていた。
小野瀬さんは心配そうな瞳でじっと見つめているけど、あのカフェに行ったなんて言えば気を使わせてしまうだろう。
「ちょ、ちょっと寝不足なだけだよっ!
それにしても、小野瀬さんのノート見やすいね」
「…そ、そうかな? 時々へびみたいにうねうね文字になっちゃうけど」
えへへ、と笑う彼女にとりあえず胸を撫で下ろした。
飛澤さんはお兄ちゃんのことを、あたしよりも知っているはず。
あたしはお兄ちゃんがバイクに乗っている姿を一度しか見たことが無い。
…気になる、けど。テルくんに怒られるだろうからなあ、やめよう。