170回、好きだと言ったら。
小野瀬さんと駅で別れると、あたしはテルくんの家に向けて歩き出す。
そんな時、ヴォンヴォン!とバイクのエンジン音が聞こえて振り返れば、テルくんがそこにいた。
「……実衣」
「テルくん! 今日は帰り早いんだね、あたしも今から帰るところだったんだよ」
「…乗れ」
「ありがとう!」
用意されていたヘルメットを受け取りつつ、テルくんの手を借りてバイクに乗れば、か細い声が聞こえた。
「……また、行ってたのかよ。あそこに」
「?? 今日は小野瀬さんと勉強してたんだよ。駅前のほうのカフェで」
「…ふうん」
テルくん、あたしは勝手に一人であそこには行かないよ。という意味も含めて、テルくんの背中に頬を擦り寄せる。
家に着くまでテルくんは一言も話さなかったけど、何となくテルくんが心配してくれていたことに気づいた。
今日の夜はとびきりのカレーを用意しよう、そう意気込んだときだ。