170回、好きだと言ったら。



ビニール袋からパンを二つ取り出したテルくんは、あたしの両手に乗せる。

あ、桃クリームメロンパンと、レーズンのパンだ…!
どちらもあたしの大好物で、思わず頬を緩ませると、テルくんが携帯を構えていた。


「テルくん! 急に撮るの禁止!!」

「別に減るもんじゃねぇだろ」

「減るの! 何かが!!」

「うるさい実衣、キライ」


出たテルくんのキライ攻撃!
あたしは文句を言いながらもパンを頬張る。


「飛澤は火鎖我(ヒサワ)族現5代目の頭だ。俺達にとっちゃ敵そのものだ」

「そ、そうだったの…?」


重々しく吐き出すように言ったテルくんは、あたしの肩に頭を預けた。


「…本当は敵なんて生ぬるぃもんじゃねえ。あいつ等が…、いや。何でもねぇ。兎に角あんま関わってもいいことねぇよ」

「う、うん。じゃあもう会わないし、行かない!」

「そうしろ」


ぽんぽん、とテルくんに頭を撫でられた。


< 53 / 284 >

この作品をシェア

pagetop