170回、好きだと言ったら。



…まさかのまさかだ。

電話越しに聞こえた声に、俺は嫌な予感がぞわりと身を震わせた。

バイクを思い切り走らせると、見えてきたカフェに俺は躊躇なく飛び入る。はあ、と息を整えて困惑気味の実衣を引っ張り寄せると、弧を描いて笑った男を睨み上げた。


「おいおい、お前の大事な女の面倒見てやったんだからお礼ぐらい言えや」


相変わらずむかつく面してやがる。
忘れるはずもねぇ男、コイツが実衣の兄貴を利用したヤツだ。

俺はギリッと奥歯を噛み締めて「そんなの願い下げだ」と吐き捨てる。実衣を腕の中へ閉じ込めると、その存在に安堵のため息を零した。


「実衣、ほんとキライ。帰んぞ」

「テルくんっし、知り合いなのっ?」


きゃんきゃん実衣が鳴いてるけど、俺は気にせず歩き出した。

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