170回、好きだと言ったら。
辿り着いた場所は、廃墟のような建物で、此処に実衣が連れて来られたのかと思えば、苛立ちで腸が煮えくり返りそうだった。
バイクを置いて、俺はその場に落ちていた缶を蹴り飛ばす。
暗闇から出てきた男に眉間にシワを寄せながら「実衣はどこだ」と訊ねた。
「やっぱりお前あの女が余程大事なんだな。
女は幼馴染だと言っていたが」
「てめぇには関係ねえ、それよりアイツはどこだよ。あ?」
「今頃寝転がされてるだろう。手は出してない」
冷静に言う男に苛立ちが募る。
あー、クソが。何で実衣を巻き込むんだよ。アイツは平和な世界で、幸せそうに生きてくれたらそれでいいのに。
何て思いながらも分かっていた。
実衣が平凡に過ごせないのは、俺といるからだというのに。