170回、好きだと言ったら。



黒縁メガネに、クセのある髪…。
確かに独特な雰囲気を持った男性だとは思っていたけれど…!


「驚かせて悪いんですが、杜禰リマという存在はもう一人いたんですよ」

「…も、もう一人?」

「ええ。今では一人で書いていますが、僕が高校生の時、同学年の方と一緒に書いていました。
その方は高校を卒業した後、何も言わずにどこかへ行ってしまい今では疎遠ですけどね」


寂しそうな横顔に、思わず胸がぎゅっと締められる。

…そっか、杜禰リマという存在は二人いたんだ。



「あ、あのもしよければ本名を教えてくれませんか? 杜禰さんはもう一人いるんでしょう? だったら別の方が…」

「それもそうですね。僕、小鳥遊 鞠(タカナシ マリ)と言います。本当は女の子みたいな名前が嫌で、今まで伏せてきたんですけど」

「全然素敵な名前だと思います…!」


あたしが首を横へぶんぶんと振れば、小鳥遊さんは目を丸くさせた。
それからふわりと優しく微笑んで「有難うございます」と呟いた。


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