170回、好きだと言ったら。
申し訳なさそうにする彼に、あたしは名前だけなら教えてもいいかなと思ってしまった。
「……沖宮 実衣と言います。それでは失礼します!」
鞄を手に取ると、そのまま小鳥遊さんのアパートを後にした。最後に見た彼の表情が、どこか驚いているような、何か言いたそうだったけれど、テルくんのことで頭がいっぱいだったあたしは気にしない振りをした。
いつもの《はちみつば》スーパー前に着くと息を整えてテルくんを待つ。
そうだ…、テルくんとは三日振りなんだ…。
経った三日なのに、いつも顔を合わせてきたテルくん相手なのに。
小鳥遊さんといると、変にそわそわして落ち着かない。どうしてかテルくんに会いたいと思ってしまった。
…分かっている、その理由を。
小さい頃から、テルくんだけを見てきて、あたしの前を歩くテルくんがカッコよかった。
テルくん、あたしね。
「実衣っ…! …ったく、寄り道すんならメールくらい入れろ」
不器用なりに心配してくれる君が大好きなんだよ。