170回、好きだと言ったら。
―午後4時45分、帰り道。
昨日、あたしの家の冷蔵庫に沢山食材を買い込んだから、テルくんの好きな辛いものを作ってあげよう。
ちゃんとご飯は食べてるのかな。
テルくん、急に会えなくなるのはやっぱり寂しいよ。
「テルくーん」
テルくんの家前に着いたあたしは、一度着替えてから来てよかったと思う。
制服で料理すると、油とかはねて落とすのが大変だし…。
チャイムを鳴らして、扉を三度ノックする。
すると、ガチャリと開いて、明らかに具合が悪そうなテルくんが顔を出した。
「……何で来たんだよ、実衣。キライ」
「久しぶりに聞いたテルくんのキライ攻撃!
あたし…、テルくんにちゃんと話したいことがあるんだ」
少し俯きながら言えば、テルくんの表情が見えないことに気づいた。
…あれ、もし今顔をあげてあからさまに嫌そうな表情を浮かべていたらどうしよう。
……そもそもテルくんがあたしを近づけないようにしていたのは、何かしら理由があるのであって。
迷惑だったかな、と思っていると。
頭の上にぽん、とあたしの大好きなテルくんの手のひらが触れた。