彼女の罪について
とあるホテルの一室。クイーンサイズのベッド。乱れたシーツが火照った肌にぬるく纏わりつく。
1時間ほど前まで飲んでいたお酒はまだ抜け切らず、頭がぼんやりとしていた。
「……聞きました、来週温泉に行くんですよね」
ほどよく筋肉のついた背中にそう投げかけると、ベッドに腰掛け煙草に火をつけた彼は得意気な顔で頷いてみせた。
「うんそう。ホテルか旅館か迷ったんだけど、たまにはいいかなと思って旅館にしたんだ。……実はね、俺たちが初めて会ったときに俺が泊まってたとこ」
「えっ! あ、そうなんだ……」
「露天風呂あるし、天気予報も今のところは晴れだから景色も最高。サプライズにも協力してくれるって」
「すごい、絶対喜びますね……由梨加」
へらりと、愛しの彼女そっくりのやわらかな笑みを浮かべた彼の唇が、私のそれに落ちてくる。
「うん、だからちゃんとヨリちゃん補充しとかないとね」
……恋人である私の親友から「大ちゃん」と呼ばれている男との、この決してキレイではない関係。
この熱に、この行為に、宛てがわれるであろう名前を私は知っている。