彼女の罪について
 


だから、誰かを愛すためにはその燻りをどこかで和らげなくてはならない。

自分の恋愛には常に緩衝材となる存在――痛みを受け止めてくれる存在が必要なのだと、由梨加と付き合い始めてしばらくした頃、彼は私を呼び出しそう告げた。


そしてそれができるのは、私しかいないのだと。

この性癖のせいで今まで何度も失敗した、何度も大切な人を傷付けてしまった、けれど由梨加と私に出会って、


このふたりとなら、うまくやっていける気がしたのだと。



――きみは彼女の一番の“親友”だよね?

――……そうです。

――彼女に幸せになってもらいたい?

――……もちろん。




――じゃあ協力し合おう、ヨリコちゃん。





こんな人が、由梨加を幸せになんてできるわけがないと思った。

男の人なんてこの世にたくさんいる。わざわざこの男を選ぶ必要なんてない。もっと“普通”の人が、いるはずなのに。

けれど、彼女は彼を、彼は彼女を選び、愛してしまった。
彼女と付き合い続ける限り、彼は「その存在」を欲する。私がだめならきっと別の誰かを探すだろう。


 
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