彼女の罪について
 


もし、彼女が何かの拍子にこのことを知ってしまったら。


傷付くに決まってる。
悲しむに決まってる。
だってどんな事情であれ、他の女と関係を持つのだから、由梨加にとってこれは紛れもない裏切りなんだ。


……彼には悪いけれど、知ってしまった以上は黙っていられない。
由梨加にきちんと話して、この人とは別れるように説得しよう。

今ならまだ大丈夫。

由梨加につらい思いはさせない。



私が、


私が、由梨加を――




「……ヨリちゃんがやめるなら、俺もやめるよ」

「……え?」

「全部話してしまおう、由梨加に。俺のことも、きみのことも、ぜーんぶ」


ギシリと、彼が私の顔の横に手をついた。
見下ろしてくる彼の薄い笑みに、火照っていた身体がひやりと冷たくなる。

……ああ、あの日と同じだ。

この顔を、この台詞を、私は知っている。


 
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