隣のキミ。


両手で持ち、それを俺に向かって差し出した。


「こ、これを…………てく……い」


やはり七海の声は小さい。

これを輝に渡して欲しい、ということなのか。

俺は手首を掴み、差し出した手を下に降ろさせた。

七海は目を丸くして顔を上げる。


「七海、こういうのは自分で渡した方がいい」

「………?」


少し首を傾げ、俺を見る。

好きな奴から代わりにラブレターを渡して欲しい、なんて結構きついものだ。

その相手がたとえ幼なじみであっても嫉妬するもんはする。


「…だから、輝のことが好きならちゃんと自分で渡した方がいいってこと」

「え……?」


本当は渡して欲しくない。

けど、そんな自分の我儘を言えるわけがない。


「頑張れよ」


俺は心にもない言葉を口にした。


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