そのくちづけ、その運命
先ほどの道中で多少しくじりはしたものの、わいわいと楽しく会話して、真人くんのことをいろいろと知ることができた。

なんと彼も私と同じ、ここが地元らしい。


1年前まで両親と実家で暮らしていたが、急遽父親の転勤が決まって母親もついて行くことになった。

転勤先は東京だったので、東京の大学に行くように言われたが、彼はこの街が好きだからという理由で留まることを決めたのだとか。

今は私と同じくアパートを借りて一人暮らしをしている。



1年前の峰倉真人という人間のことは知る由もないが、それでもここに留まってくれたことに心の中で感謝せずにはいられない。

だって、東京の大学に行っていたらこうして出会うこともなかった。

なんて不思議な縁だろう。

今までならまったく関係のない、いわば他人同士の二人。
そんな二人が、降りしきる雨の中、古ぼけたバスの停留所で時間を共有していること自体がとても不思議だ。

なんて奇妙な縁なんだろう。

こうなることを、1週間前の私は、いや、1日前の私ですら想像していなかった。
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