そのくちづけ、その運命
でも、なぜだろう。

真人くんの口数が明らかに減った。
何を考えているのだろう。


誘われてなんとなく付いて来てしまって、
そこで放置されるのは結構辛い…

彼は今どんな表情をしているのだろうか。

せめてそれを確かめたい。

そうっと気づかれないように隣に視線を泳がせたが、あいにく彼はまっすぐに、前を向いていて、目も前髪に隠れてよく見えない。



ザーッと雨の音が辺りを包み込む。
それは、私と真人の二人だけの世界が作り出されているようだった。

そんな演出にも思えなくもない。

なんて、柄にもないことを私はぼうっとする頭で考えていた。

誇張ではなく、本当に、そんな神秘的な雰囲気だったから―





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