そのくちづけ、その運命
不意に、


声が聞こえた。


「実琴」


明確に私の名前が呼ばれる。

み・こ・との3文字がすぐ隣から――

私は、突然の不意打ちで名前を呼び捨てにされたことと、その声が思ったよりも近くで聞こえたことに驚いて、

反射的に彼の方を見た。


「………っ」

真人くんは、真剣なまなざしをこちらに向けていた。

色素が薄い茶色い目。

最初に彼を印象付けたことの一つだが、
今はその瞳が何色かよく分からない。

ただ、逸らすことなくじっと私を見つめている。
もし雨ふりじゃなかったら、その瞳に私の姿がくっきりと映っていたことだろう――




「オレのこと、好きになってよ」





ふた言めに彼の口から放たれた言葉は、思いもよらないものだった。

彼は確かにそう言った。

次の瞬間、真人くんの唇が私の唇に押し付けられる。


ふわっとした彼の前髪がおでこのあたりにかかる。

うそ。

え……今私真人くんとキスしてる?

今、真人くんからキスしたよね?

私、された方だよね?



じかに伝わる彼の唇の感触と、その唇から伝わる彼の体温。


……熱い。
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