そのくちづけ、その運命
どうしていいかわからず、私は体を硬直させたまま、ぎゅっと目をつむっていた。


……どのくらいの間そうしていたのだろう。

唇が解放される。


あれ

終わった?


おそるおそる固く閉じていた目を開けると、真人くんと目が合う。

ち、ちかい。

吐息が触れ合うくらいの至近距離。

そこから、彼は動かない。

「ま、真人くん…」


その強い視線に耐え切れず、思わず身を引く。

でも体の熱は私に居座って、逃げてくれない。

熱い、熱いよ・・・

トクン、トクン、トクン、トクン、

心臓が絶え間なく音を立てる。一定の間隔をあけて。


そして気づいた。

彼が私を見つめるその瞳。

その瞳はなぜかとても儚げで

今まで見た中で、一番透き通って見えた。


今目の前にいるあなたは、いったい何を考えているの?

あなたの心の内が知りたい――…


いつの間にか、私は吸い込まれるように、

その瞳の奥にあるものが知りたくて、彼の瞳をまっすぐに見返していた。
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