そのくちづけ、その運命
気が付いたとき、私は少しでも彼の熱から逃れたくて、降りしきる雨の中、駆け出していた。


傘は持っていない。

でもそんなことを気にしている心理状況ではなかった。



やばいやばいやばいやばいやばい……っ!!!!

叫びだしたい気分だ。

どうしよう私。鏡を見なくても分かる。
顔真っ赤だ。

真人くんにそのことが気づかれてないことをひそかに祈りながら、思いっきり地面を蹴った。


雨粒が顔に当たる。


はやく温度を下げて…!!


恥ずかしい恥ずかしい
恥ずかしい恥ずかしい。


なんで恥ずかしいと思ってしまうのか。

しかし私はそう思わずにはいられない。

でもその一方。


彼は間違いなくこの私に、正真正銘の、純粋無垢な告白をくれた。



そう頭では理解できていても、気持ちが全く追いつかない。



彼の想いも、その熱量もすべて唇を通じて伝わってきたというのに。


「好きになれって?」

そんなこと私に言わないでよ。

恋愛超初心者の私が、こんなことされて、あんなこと言われて、嬉しくないわけないじゃん…!!

それに、すごく綺麗で、優しさをまとって、そんな完璧な人に――


走りながら、心の奥底から沸き起こったその感情を力強く噛みしめる。


もうとっくに、あなたのこと好きだよ…!!
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